2021年3月16日火曜日

TEDx Talks に学ぶ その5

 TEDx Talks に学ぶ その5

今回の題材は、「Speak like a leader/Simon Lancaster」です。

日本語のタイトルだと、「修辞学の復活」です。それだけだったら難しそうだし、視聴しなかったと思います。「Speak like a leader」の方がいいと思います。その方が、どんな話なのか気になります。



このトークを選んだのは、「どうしたら英語の能力が上がるか?」という話ばかりでは面白くないと思ったからです。

話は面白いのですが、何が違うのかうまく表現できませんが、今までよく聞いている英語と何かが違うような印象を与えるスピーチでした。確信はありませんが、演壇に立っている人物がイギリス人で、話されている言語もイギリス英語なのではないかと思います。


さて、話の主題のリーダーとはだれを指すのでしょうか?

どうやら、ウインストン・チャーチル、ディビッド・キャメロン、トニー・ブレアなどがが引き合いに出されますので、政治家のことを指しているようです。

リーダーの話し方には共通した特徴があり、それは人を引きつけるための(修辞学の)テクニックを駆使したものになっているというのです。そしてその特徴は何かという話が展開します。


特徴の1つが、「Metaphor(隠喩)」です。

The Arab Spring(アラブの春)」、「The Calais Jungle(カレー市のジャングル)」、「The financial storm(金融界の嵐)」などです。「アラブの春」は知っていましたが、「カレー市のジャングル」、「金融界の嵐」は知りませんでした。

取り上げられる題材の1つ1つがとても難しいように思えるのですがどうでしょうか?


Rhyme(韻)」も特徴の1つです。

ちょっと古い話題に感じますが(このスピーチは2016年に録画されたようです) 、OJ・シンプソンの裁判で有名になったセリフが出てきます。

If it doesn't fit, you must acquit.

この裁判の内容は知りませんでしたので調べたところ、「殺人事件の証拠の手袋がOJ・シンプソンの手に比べて小さすぎ、それが犯人のものなら、OJ・シンプソンは犯人ではない」という弁護のスピーチが韻を踏んだ表現になっていたということのようです。そして、表現が韻を踏んでいて、かつシンプルだと、その話が信じてもらいやすいという調査データがあるそうです。

もう1つの面白い例として、「I before E except after C」という覚え歌が紹介されています。この覚え歌が何を意味しているのか、何回も調べていく内にやっと何の話なのか分かりました。

(「七尾藍佳のExpress Yourself」のHP内の、「I Before E Except After C♪ 覚え歌で攻略する英語スペリング」が分かりやすいです。)

このスピーチによれば、44の正しい例と、900の正しくない例が存在するそうです。興味を持ったので少しだけ挑戦してみましたが、私の知っている英単語の範囲では、正しい例の方が多く、正しくない例の方が少ないように思いました。


このスピーチ自体も、「隠喩」や「韻」、その他の修辞学上のテクニックを駆使していています。全体の流れは分かるのですが、細かい部分で何を言わんとしているのか理解しようとすると、とても手ごわい内容になっています。

この講演が、イタリアのベローナ市で行われたことに脅威を覚えました。「イタリア人は果たして、こんな難しい表現に満ちた講演を1回聞いただけで理解できるのだろうか」と言った方がいいかもしれません。

このスピーチを聞いたころ、「A Room with a View(眺めのいい部屋)」という小説を、たまたま読んでいました。そこで、もしかしたらと思える文章を見つけました。

というのは、その小説の中で、主人公がイタリアの「Florence(フィレンツェ)」を旅行するのですが、イタリアにはイギリス人移住者の大規模なコミュニティがあるようなのです。その物語の設定は20世紀初頭で、そのころからイギリス人はイタリアに数多く移住していたようです。

だから、このTEDx講演も、イタリアのベローナ市のイギリス人移住者を主な観客として行われていたのではないか、だからこんな難しい内容でも観客の笑いを取れるのではないかと思いました。(もしくは、難しく感じたのはもっとしっかり勉強しなさいと言う啓示なのかも…。)




2021年3月7日日曜日

TEDx Talks に学ぶ その4

 TEDx Talks に学ぶ その4

今回の題材は、「Why We Struggle Learning Language/Gabriel Wyner」です。




フランス語をかなり学んでフランスを訪れた際、まだ学校に行っていない5歳の少女に文法のミスを指摘されたという話からスタートします。その5歳の子は計算上は15000時間フランス語にさらされているのに、自分はフランス語教室で何時間勉強してきたのかと自問します。

それを聞いてこの私はどれほどの時間英会話とつきあってきたのだろう?英語の授業を日本語で聞く時間を含めずに、純粋に英語を何時間聞いてきたのだろう?と反省させられます。

導入からそんなグサッとくる質問に反省させられながら話を聞き続けると、その後はどのようにしていくつかの外国語をマスターしてきたか、その肝となるのは何かというお話でした。


今回取り上げたいのは、以下の文章です。

Well, let's return to where I was with French. My situation was as follows: I was taking two master's degrees, one in song, one in opera, and so I had six days of class a week. My only free time was an hour a day on the subway, Sundays, and Austrian national holidays, on which, thankfully, there were many.


このスピーチには日本語訳がありませんので、自分の力で解釈するしかありません。

前半に、エンジニアになろうと思ったが、音楽が好きでそちらを学ぶことにして、おまけに語学学校で複数の語学を習得するコースに参加した話がありました。song」とか「opera」とかはその話の延長です。

直前のトークは、スカンジナビアのバーで聞いた単語は印象深く、ハンガリー語の教室で聞いた単語は印象が薄いという話でした。

そうやって学んで、今どの立ち位置にいるかという話の導入部分であろうと想像しました。ドイツ語や、イタリア語はマスターしたが、フランス語で手こずっているようでした。そしてこの時はまだ、フランス語の習得には至っていないようです。


それで、問題の文章ですが、何を言いたいのか分かりませんでした。「1週間の内、6日間勉強していて、空き時間は地下鉄での1時間と日曜日と祭日だけでした。」と言っているように思います。でもなぜそういう状況の説明をこの瞬間にするのでしょうか?

その後、インターネットを使った学習を続け、語学学校の講師のインタビューでフランス語で考えながら会話ができ、1つハードルを越えたという話に続きます。敢えてこの内容をスピーチの中でしたのは、そういう状況だが、めげずに頑張ったと言いたかったのでしょうか。

自分だったら、後半の説明につながらないのなら割愛しそうな内容です。突然、「毎日1時間しか自由時間がなかった。」と言われれば、ストーリー展開上重要な意味合いがあると思ってしまいます。ここのところで、書かれた通りの表現の意味は分かるが、何か重要なことを理解できていないのではないかと猛烈に不安になりました。

同様に他のスピーチを聞いた時でも、言外の意味をくみ取っていないのではないか、正しい意味を取り違えているのではないかと不安になる瞬間が何度もあります。見えない敵におびえすぎのようにも思いますが、そうでないかもしれません。そういう時は、確信が持てるヒアリング能力を確立するまで、今日もがんばるしかないなと割り切ることにしています。




2021年3月2日火曜日

TEDx Talks に学ぶ その3

TEDx Talks に学ぶ その3

COVID19の蔓延のため、ボランティアガイドは活動拠点に入ることすらできなくなりました。そういう状況がいつまでも改善しないため、このブログも更新するのを怠っていました。もう一度TED×Talksを聞き始めましたので、最近感じたことを書こうと思います。




今回の題材は、「How to learn any language in six months / Chris Lonsdale」のスピーチです。どんな外国語も、彼のメソッドを忠実に行えば6カ月でしゃべることができるというのはとても魅力的な提案です。

大筋の流れは何となくつかめました。子供の時どうだったか、中国へ行って中国語をネイティブレベルでしゃべれるようになったこと、そこから彼のメソッドがどうつながっているのかという説明になります。話題が身近な感じで、流れもとらえやすく何となくわかった気がします。

ところが、肝心なところになると彼は急に早口になって、彼が何を言いたいのか分からなくなります。それが重要な情報なのか、大筋の流れさえつかんでおけばいいのか分からなくて心配になります。

例えばこうです。

And you've just learned that this...is important, it's relevant because it means this, and anything that is related, any information related to your survival is stuff that you're going to pay attention to and therefore you're going to remember it.

(日本語訳では、「あの木にあった傷は、恐ろしい熊を示すので、自分に関わり、重要なものだと学ぶわけです。どんな情報でも自分の生命に関わるなら注意を払うでしょうし、記録に残るのです。」となっています。) 

もちろん、スクリーンに熊が木につけた爪のあとの写真、巨大なグリズリーの写真が説明に沿って出てきますから英語力があれば分かると思います。私の理解を告白すれば、最初の「this」は「木にあった傷」で、次の「this」は「熊」だと思いますがそれであっているでしょうか。

次は、「anything that is related (to your survival)」、「any information related to your suvival」だと思います。そして後半の「stuff that you're going to pay attention」、「(stuff that you're going to remember it」の()で補った解釈はあっていますでしょうか。 

この記事を書いていて思ったのですが、日本語で書く場合なら写真があろうと敢えて言いたいことを強調しようとして、「木に刻まれた爪のあと」、「恐ろしい巨大な熊」という言葉を使うのではないでしょうか?

この文章で「this」を使うのが、この話者の特有の表現なのか、英語の一般的な表現なのかは分かりません。しかし、私にとっては、ここで言いたいであろうことがすぐに頭に入ってこないし、重要な情報だという理解の妨げになるようです。何度聞いても、「this」や「that」ばかりが行き来してしまい、日本語訳を読んでやっと納得というのが正直なところです。

漠然と感じているのは、英語の表現と日本語の表現には今まで学んできたこと以外にも、もっと違いが潜んでいるということです。TED×Talksを聞くことが、そういうことの理解につながればいいなあと思います。